ベルナウの連盟研修学校

バウハウス2代目校長のハンネス・マイヤーは優れた建築家であったが、初代校長、3代目校長が余りに高名であったために少し影が薄く、気の毒な存在である。氏はベルリン郊外のベルナウに「連盟研修学校」という作品を残している。全体的にガラスを多用して、明るい建築となっている。谷崎潤一郎は「陰翳礼賛」というエッセーを残している。日本建築の美を作家の目で次のように述べている。「もし日本座敷を一つの墨絵に例えるなら、障子は墨色の最も淡い部分であり、床の間は最も濃い部分である。私は数寄を凝らした日本座敷の床の間を見る毎に、いかに日本人が陰翳の秘密を理解し、光と蔭との使ひ分けに巧妙であるかに感嘆する。なぜなら、そこには此れという特別なしつらへがあるのではない。・・・以下略」

マイヤーの建築はただガラスを通して明るさを室内に取り込むことに一生懸命で、谷崎が述べるような日本建築の細やかさは感じられない。日本のように緯度の低い土地での建築は日射を防ぐことが大切で、それがために庇が発達したのであろう。ドイツのように緯度が高い土地では庇は不要でむしろ日射を取り込むことが大切なのであろう。

(田中辰明 お茶の水女子大学名誉教授)

2021年4月13日